今回は男性のお話しです。
そこそこ、地位や名誉のある方。会社の経営者であったり大企業にお勤めであったり、国家公務員の方や「先生」と呼ばれるような人。
退職するまでは、VIPの扱いをされていたであろう人が施設に入り普通の人になったとき、そのギャップに苛立ちを覚えたり権力を誇示しようとすることがあります。
お医者様だったAさんは、他のご入居者からも「先生」と呼ばれていました。
有料の施設とは言え、マンパワーには限りがあり個別の要望に答えてることは難しいです。A先生の希望するサービスに対応できないことが多々ありました。
「私達の金で、お前たちは働かせてやっているんだ」
という感じなので、自分の意思が通らないことに苛立ちを覚えます。
当然のことながら、スタッフは萎縮するしA先生にお会いするとアンラッキーだと思ってしまうわけです。
スタッフも人間ですから、必要以上の関わりを持ちたく無いと思ってしまいます。
可哀想にA先生は、毎日イライラすることばかりです。高い入居金を払って入ったのに自分の思い通りにならないのですから不幸です・・・。
負のスパイラルです。
そんなA先生が居室で転倒して、介護スタッフが在中していて24時間間介護を行うフロアに来ることになりました。(大きな保健室みたいなイメージです)
最初のうちは他の要介護の人(認知症の方)と一緒にはいたくないと、入室を拒否されていましたが、やはり人の手を借りなければ生活できないと渋々入室されました。
入室しても最初のうちは、お手伝いも拒否され何でも自分でできるんだと頑張っていました。
A先生はそこで2週間ほど過ごされ、居室に戻られました。
その2週間で彼は驚くほど変わっていきました。
それは、地位や名誉やお金ではどうにもならないことを知ったから、そして
そんなものは全く関係なく、優しく接するスタッフの愛情に触れたからだと思います。
「A先生」は「Aさん」になったのです。
先生という鎧を脱いで
Aさんという1人のおじいちゃんになりました。
本来のAさんは、とてもユーモアのある優しい男性でした。
そんなAさんに対してスタッフの声かけは、自然と増えます。
Aさんの周りには自然と人が集まるようになります。
プラスのスパイラルに180度変わっていきました。
Aさんは今100歳を超えて、みんなに愛されてお元気に過ごしています。
どんな高級な老人ホームでも、そこで働く職員にとって、その方の過去の偉業や家柄や資産などは全く問題ではなく、みんな平等です。
人間性の部分のみで対面するのです。
もちろん、最初から素晴らしい人格の方も大勢いらっしゃいます。
人生の最期の期間を幸せに過ごすためには何が一番必要なのか
若くてカワイイ介護スタッフに
「カワイイ〜!!」
とハグされるようなおじいちゃんに。ぜひなってください。
そんなおじいちゃんになれたら、老後はパラダイスです♪