施設長からのメールが届いたのは
午後11時を回っていました。
施設長が、そんな遅い時間まで仕事をしなくてはならないということに、介護現場の忙しさや人手不足を改めて感じるのです。
山田様
平素より大変お世話になりました。
また明日改めてメールしますが、今ちょうど自宅につきまして、駐車場で〇〇様のお写真を拝見しました。
涙が出ました。
お写真が素敵なのはもちろんですが、私たち介護職は介護が必要になった今のご入居者様しか知らず、本来は大切にしなければならない、それまでのご生活を忘れがちになります。
〇〇さんにも、素晴らしい人生の歩みがあり、たまたま罹患してしまった認知症によりできないことや、わからないことが増えてしまいしましたが、こうして若々しくキラキラしたお写真を拝見すると、胸にグッときますね。
今日は何度も何度もお写真を見てしまいそうです。
ありがとうございました。
まずはお礼まで。
私は施設で15年間仕事をしていました。介護福祉士とケアマネ の業務を兼務していました。
ケアプランを作成する時、ご利用者と家族の意向を踏まえ課題分析してプランを作成するのが基本です。
ですが、私達は既に認知症等になり、自宅での生活が困難になった状態でのその方しか知りません。
それ以前のその方を知らないのです。
介護職にとって、施設の中での姿がその人の全てになってしまいます。
ですが、それはその人のほんの一部で
その人の中には、埋もれてしまったその人らしさが沢山あるのです。
「そんな深掘りしなくて良いから」と言われそうですが
人生の最後の時期の生活プランを立てるって、すごく責任重大だって思っていました。
私の場合は、身だしなみを整えることにより潜在している「その人らしさ」を引き出せることが出来るということに気づきました。
普段見たことのない、その人の一面を知ることができたことに感動しました。
なので美容師の資格を取りました。
なので施設で美容の活動をしてきました。
そして、その姿を
ご本人はもちろん、ご家族や、施設職員が
本来のその人が持っていいる、女性としての輝いている姿に気づいて欲しい。
輝く姿は過去ではないんだということ。
環境が変われば出てくるのだということを
もっと色んな人に伝えていきたい。
だから写真を撮り始めました。
このメールを頂いて
初心に戻ることができました。
ひとりずつしか出来ない、効率の悪い仕事かもしれないですが
喜んでくれる高齢者やご家庭
そして、施設長のように思っていただける方をひとりでも作っていきたいと思うのでした。
私は、人生の後半を
この仕事に捧げようと思ったのは
ここだから。